第2章 寮の怪異事件
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夜。
結局昼は何も起きず、伏黒くんは私の部屋で勉強をしたり、スマホをいじったりしていた。
私は彼が持っていた本を読ませてもらった。
眠る直前、読み終わった本をおく。
「それ、俺、それ途中までしか読まなかったんだけど、面白い?」
「え、うん、すごく面白かったよ、途中でやめちゃったんだ」
「なんか展開が無理やりというか。周りが楽観的すぎて、そうはならないだろって思ったら冷めたんだよな。」
「楽観的、、」
二人きりで1日過ごすと、なんとなく、伏黒くんがどんな人なのかわかったような気がする。すごくぶっきらぼうで、あまり何考えてるかわからないけど、実はすっごく優しくて、私に気を遣ってくれてる気がした。
部屋の灯りを落として、私はベッドに。伏黒くんは、部屋の隅に敷いた布団に横になった。
「おやすみなさい……伏黒くん」
「……ああ。何かあったらすぐ言えよ」
「うん……ありがとう」
──そのまま、まぶたを閉じる。
けれど、寝付けなかった。
伏黒くんが同じ部屋にいるっていう現実が、なんだかふわふわして、落ち着かない。
寝返りを打つたびに、意識してしまう。
(……床、冷たくないのかな)
どれくらい時間が経っただろう、
そんなことを思っていたら──
──チリン。
……また、あの音。
(……えっ?)
目を開けた瞬間。
部屋の中に、すっと冷たい風が流れ込んだ気がした。
ペンダントがじん、と熱を持つ。
「……ふ、しぐろくん、っ」
声が震える。
彼もすでに気づいていて、体を起こしていた。
「下がれ。……来てる」
私のすぐそばに、ぱっと立ちはだかる伏黒くん。
何も見えないのに、何かがいる気配だけが、びりびりと伝わってくる。
(怖い……でも、なんで? ペンダントは……)
私は気がついた。
ペンダントが、いつもより熱くなりすぎている。今まではこんなこと、なかったのに。
音と気配が消え、沈黙だけが部屋に響いた。
「大丈夫か?」
「大丈夫……っ、わたし、だいじょ──」
「──大丈夫じゃないな、こっち来い」
伏黒くんが、私の手を取った。