第2章 寮の怪異事件
「で、君が新入りさんか」
大きな手で、お盆ごとテーブルにどすんと座ったのは
「…パンダ?」
「そ、俺はパンダだ。よろしくな」
それだけ言ってパンダさんはご飯を食べながら私の方を向く。
…外の世界って、すごいんだな。
「名前、なんてーの?」
パンダさんに聞かれて、私は少しだけ考え込む。
──そういえば、まだ誰にもちゃんと自己紹介していなかった。
私は改めて、お箸を置いてみんなのことをひとめみる。
「……あの、香久夜って言います」
「ちゃんね、よろしく〜
朝から災難だったな。」
「わー、そのことはもう、大丈夫、です。」
思わずうつむいてしまうと、伏黒がぼそっと言った。
「……気にすんな。あんなのは、事故だ」
そう言って残りのご飯をかき込んだ伏黒くん。
「あ、あの、伏黒くん、っ」
「…ん?」
「そ、その、さっき、私の、はだ、か、見た?」
「見てない。」
即答してもらって少し安心する。
よ、よかった。見られてたら、隣で生活なんて、できなくなっちゃうもん。
「あれ、耳赤くなって、」
「ごちそうさま。」
そう言って食器を戻しに伏黒くんは立ち上がった。
そのやりとりを見ていた棘くんが、小さく笑った気がした。
口元に手を当てて、彼はおにぎりを指差す。
「……しゃけ」
「え? あ、これ、棘、さんの?」
「しゃけ」
頷きながら、ほんの少しだけおにぎりを差し出してくれる。
食べろってこと、かな。
「ありがとう……いただきます」
そっと受け取ると、棘くんの目がふわっと細くなった。
「おーおー、デレデレだな狗巻くん」
そう言って彼の隣にすわったのはメガネをかけた綺麗な女の人。
「あんたがかぐや姫か。」
「え、えっと、」
「私のことは真希と呼べ。」
「は、はいマキさん。」
「おい、あんまり新入り怖がらせるなよーまき。」
「私が怖いならそれはそっちがへなちょこなせいだよ。憂太みたいな」
そう言ってマキさんという人は棘さんのおにぎりを一人で平らげてしまった。
す、すごい嵐みたいな人だ…。