第2章 寮の怪異事件
長身をゆるく揺らしながら、テーブルにやってくると、目の奥が見えないサングラス越しでも、満面のニヤけ顔が透けてる気がした。
「恵〜、女子の入浴シーンにニアミスとは、こりゃ春だねぇ。」
「……うるさいです。俺は何も見てない」
「うんうん、そういうことにしとく。〜、恵、なんか変な顔してなかった?鼻血とか出してなかった?」
「な、なんで私に聞くんですか……!」
「だってさ〜、まじでちょー見たかったわ。その時のみんなの表情」
「先生、やめてくださいって……」
乙骨くんまで顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「はいはい、からかうのはこのへんにして、の荷物、今日中には届くように手配してあるからね〜。下着もばっちりセットで!」
五条先生は大きく親指を立ててからひらひらと手を振った。
「み、みんなの前で下着とか言わないください、!」
「しゃけ」
そんな中、さっき目が合ってしまった彼がよくわからない言葉で挨拶をしながら、私の向かいに座った。
「……しゃけ?」
小さく首をかしげると、
「あ、棘くんの“言葉”は呪言って言ってね。言葉に呪力が宿っちゃうから、普段は安全な食べ物の名前だけで会話してるんだよ」
そう言って、乙骨先輩と言われた彼がが笑って教えてくれた。
「……そう、なんですね。」
そう言うと、棘くんはちょっとだけ目を細めて“ツナマヨ”ってつぶやいた。