第2章 寮の怪異事件
シャワーの湯けむりに包まれて、彼女は髪をとかしながらほっと息を吐く。
湯船につかると、全身が抱きしめられたみたいであったかい。
胸にはペンダントがぶら下がっていた。昨晩、届けられたそれを肌身離さず持ち歩くことを言いつけられた。この敷地内にいれば、ペンダントをつけていても問題はない、五条先生は言っていた。
…それはつまり、私は高専の外には出られないということだ。
山奥が、高専に変わっただけ?
そんな考えが頭をよぎった時、
湯船に浸かっているはずなのに、体がヒュッと冷たくなった気がした。
…いや、考えるのはやめよう。
体も温まり終わったと、湯船から上がった。
鍵を開け、扉を開こうとしたそのとき。
「……伏黒くんかな?いるの」
「しゃけ」
ガララララ
横開きのドアを開けるとツンツン頭の男の子と目の下にクマのある男の子が目の前に立っていた。
「たかな!?」
「え、女の子、っ!」
脱衣所は一気に騒然。
「あの、ごめんなさい、!」
「えっごめんなさい!違うんです!待って、あの、え、なんで!?」
「高菜明太子!」
しゃがみ込んでバスタオルをぎゅっと握りしめ、パニック状態で扉に向かって叫ぶ。
と、そのとき。
「……先輩たち、何してるんですか。」
低くて冷たい声。廊下から戻ってきた伏黒が、ドアの前に立っていた。
「え、伏黒くん、ってことはこの子、え!?」
「……違います、俺の“監視対象”です。」
「こんぶ、、」
一回出てください。と伏黒ははその男子たちを外に出し、彼女を脱衣所に一人にした。扉を出る前に伏黒はコンビニの袋を一つ置いた。
「買ってきた。サイズ、たぶん合ってると思うけど、とりあえず」
彼女は消えいるような声でありがとう、と呟いた。
伏黒はそれを聞いているのか聞いていないのか――
「……鍵、脱衣所の方もちゃんとかけとけ。じゃないと、俺が怒られる」
とだけ言って、また背を向けた。
「ご、ごめんなさい」
誰もいない脱衣所で、力が抜けるように、は地面に座り込んでしまった。
チリンチリン…
誰もいない浴室からそんな音がした。