第4章 ファーストキス
リビングには理解さんと私の二人だけ。
夕飯を終えた後、他の皆さんはそれぞれ用事があると言って部屋に戻っていった。
(……静かだな)
理解さんと私はソファに座って各々の世界に入っている。
理解さんは本の世界。私はアクションゲームの世界。
イヤホンを差してゲームをしていると、ローディング画面になった時の無音がこの部屋の静けさをより引き立てる。
当然私たちの間に会話はない。
(理解さんは何の本を読んでるんだろう?)
途切れた集中力が私の視線を理解さんの方に向けさせる。
「天音さん、何か?」
「うえぇ!?」
「何語ですか」
「いや、びっくりしちゃって。理解さん、どうして私が見てるって気付いたんですか?」
「ボタンを押す音が止まりましたので」
「あぁ……」
ゲームの音が出ないようにイヤホンをしていたけど、ボタンを押す音まではどうしようもない。
「すみません、うるさかったですよね?」
「いえいえ。50デシベルくらいの大きさでしたよ」
「それってどれくらいですか?」
「50デシベルくらいです」
一切表現が変わらなかった。私の聞き方が悪かったのかな?
「とりあえず理解さんとしては別にうるさくなかったってことでいいですか?」
「そうですね。ところで、何のゲームをしているんですか?」
「ゾンビ撃つやつです。見ますか?」
私は理解さんの方に画面を向ける。
「いいえ、結構です。ゾンビはちょっと……」
「見て楽しいデザインじゃないですからね。あ、でも大瀬さんは好きだって言ってました」
「大瀬さんの好きなものは……その……個性的なので……」
理解さんはいったい何を思い出していたのだろう?
なんだかとても苦い顔をしている。
「うーん、理解さんでも楽しめそうなゲームは……」
いったんアクションゲームを中断して、他のゲームを探す。
こういう時、ダウンロード版を買っておくと便利だ。
「あ!」