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カリスマ達の愛は重い【カリスマ】

第3章 デコレーション


 大瀬さんに案内されて、私は203号室に足を踏み入れた。
 初めて入る大瀬さんの部屋。
 雑然とものが置いてある。見慣れないものも多い。


「首輪、取れないんですよね」
「う、うん」
「じゃあそのまま失礼します」


 何やら道具を拾い上げた大瀬さんは、私が声を出すよりも早く接近する。
 ち、近い!
 顎に大瀬さんの髪が当たりそう。


「この生地なら接着剤で付くから……これと、これを……」


 私に言っているわけではない大瀬さんの言葉が、私の素肌をかすめていく。
 う、うう……我慢しないと。
 ここで大瀬さんにしゃべらないでなんて言ったら絶対に気にするもん。


「あとはボタンと……」


 ずっとしゃべり続けているわけじゃないから我慢できてるけど、けっこうくすぐったい。


「あの」
「ひっ!」


 今までとは違いはっきりとした声。私にかけられた声だ。
 だというのに私ったら我慢できずに変な声をあげてしまった。


「す、すみません!」


 大瀬さんから返って来た謝罪の語気が、私の声をどう解釈したのかを物語っていた。
 いきなり声を掛けられて驚いたから出た声ではない、と大瀬さんにはバレている。


「あああああの! どっちがいいのか聞きたくて」
「わ、分かった! でもそのまましゃべらないで……」


 大瀬さんがしゃべればしゃべるほどくすぐったく、会話をするならこのままというわけにはいかない。
 大瀬さんは私から離れて顔を上げる。
 その顔は真っ赤だ。


「真っ赤ですね」


 言ったのは私じゃなくて、大瀬さんの方。


「だって…………大瀬さんだって、真っ赤ですよ」


 お互いに真っ赤な顔をしたまま見つめ合う。
 気まずいけど、何をいったらいいのか分からない。


「……ボタン」
「え?」
「飾りボタン、黄色と青どっちがいいですか?」
「あ……青で」
「分かりました」


 簡素な会話を繰り広げた後、大瀬さんは作業を再開させる。
 どうしても大瀬さんの動きに集中してしまう。
 あれ? もしかして大瀬さんの手、少し震えてる?


(さっきまではそんなことなかったはず……)

「あ……」
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