第3章 デコレーション
「はぁ……」
鏡に映る自分の首に目が行く。首……というか首輪に。
依央利さんが鍵を外してくれないせいで、私はまだ首輪をつけたままだ。
これ絶対におかしい人に見られるよね。
だって首輪つけて生活してる人なんてそうそういないし。
「どうしよう……」
服とか工夫して外に出る時には見えないようにしてたけど、毎日首が隠れる服を着てたら不審に思われそう。
「あの」
「わっ! ……大瀬さん」
後ろから声をかけてきたのは大瀬さん。
あんまり部屋の外に出てこないから、部屋にいるのか外出中なのか分からないことが多い。今日は部屋にいたらしい。
「差し出がましいかと思いましたが、お困りのようでしたので声を掛けました。けど驚かせてしまったみたいですね。ごめんなさい、死にます」
「待って待って待って! そのナイフをしまって!」
慌てて腕を押さえてナイフで喉を掻き切るのを止める。
「こ、困ってたんだ! 大瀬さんに相談できれば助かる!」
「そう、なんですか……?」
「うん。この首輪をどうにかしたくて」
「首輪……」
私は首輪が取れず人目が気になることを大瀬さんに伝える。
「あの……デコりましょうか?」
「え? デコる?」
「首輪に飾りボタンやスパンコールをつけて、チョーカーみたいにすればいいかと……」
「あー……」
「すみません、問題の解決になってないですよね。それ以前にこんなクソ吉が手を加えたものなんかつけていたくないですよね」
「違う違う違う! 想像してただけ! うん! チョーカーなら首輪よりも気にならない! お願いします、大瀬さん!」
「え……? 本当にいいんですか?」
「うん、お願いします」