第2章 乙女ゲーム
「待って。私に相応しいっていうか私の方が相手に相応しくないから!」
「は? テラくんに相応しい天音が他の誰か相手に相応しくないなんてことあるわけないでしょ? 喧嘩売ってるの?」
「売ってないです」
圧がすごい。
仕方ないから私は乙女ゲームをやり始めたテラさんの隣に座ってぼーっとする。
携帯ゲーム機だから何やってるか分からないし。
「綺麗」
「えっ」
テラさんがうっとりとした声を上げた。
鏡見ながら言うことはあるけど、他の誰かを見ながら言うのは初めて見た。
いったいどのキャラを見てそう言ったんだろう?
「今、誰と話してるの?」
「あー……誰だろう。名前分かんないや」
まだ名前覚えてなかった。
そりゃそっか。まだ始めたばっかだし、前情報何にもないままスタートしてたし。
「あぁ、綺麗」
「また!?」
いったい誰に対してこんな高評価を?
こっそりとテラさんのやっている画面をのぞき込む。
けれどテラさんがやっている画面からは誰が攻略相手なのか判別できなかった。
気になる。
根気よくテラさんの様子を確認して、ついにその瞬間をとらえた。
「綺麗」
「暗転!?!?!?」
ゲームが暗転した瞬間、テラさんは画面に映る自分の姿を嬉しそうに眺めていた。
「そこに映る姿って普通現実に引き戻されるから嫌がられるのに……」
自分大好きなテラさんにとっては暗転で映る自分の姿こそが一番かっこよかったらしい。