第5章 寝落ち
リビングで寝落ちするなんて、理解さんに見られたら変なあだ名で罵られるに決まってる。
なのに私という人間は、うっかりリビングでそのまま寝入ってしまった。
「ん……?」
朝の陽ざしが私の顔にかかっていた。そのまぶしさにゆっくりと目を開ける。
起き上がってみて、私は異変に気付く。
(え……なにこれ?)
手が、人間の手じゃない。
モフモフの塊。なんかの獣の手。
「プゥ(えぇ~~!?)」
しかも声もおかしいし。
「プゥプゥ(どうなってるの!)」
ソファから降りるとやけに大きな衝撃が体に加わる。
ふと振り返ってソファを見上げる。
(ソファ、でかっ!!)
なんということか。ソファが巨大化してしまっていた。
それだけじゃない。
テーブルも椅子も全部ぜーんぶ、巨大化している。
(これはまさか……私が小さくなってるってこと!?)
いったい何が起きてるの?
いいアイディアも浮かばず途方に暮れていると、身体がぐっと持ち上げられた。
「なぜこんなところにうさぎがいるのでしょう?」
(天彦さん!)
私を持ち上げているのは天彦さんだった。
めちゃめちゃ近くに見たこともない巨大な天彦さんの顔。
「プゥプゥ(天彦さん、私です。天音です)」
「なんです? お腹がすいているんですか?」
……まったく伝わらない。
というか、天彦さんの言葉が確かなら、私はうさぎになっているのか。
「天彦さん、ひとりで何をしゃべっているんですか?」