第4章 ファーストキス
「っ!」
依央利さんの予想外の予想に心臓が嫌な音を立てた。
「まっさかぁ、理解くんだよ。それはないない」
半笑いのテラさんに否定されて、ほっとする。
確かに日頃の理解さんの行動を見ていれば、理解さんがそんなことをするはずがない。
だからこそ、この事故に対してどう処理をすれば分からないのだ。
「私の……」
か細い理解さんの声。
「理解さん……?」
その小さな声を聞き逃さないように耳に意識を集中する。
「私の純潔を奪った責任を取ってください」
「は?」
「えええええ!!! 天音さん、理解さんの純潔奪っちゃったの!?」
「奪ってない奪ってない!」
「天音、ここで理解と何があったの?」
依央利さんとテラさんが横から何か言ってくるけど、今は理解さんと話をつけないといけない。
「ちょっと理解さんどういうつもりですか!!」
「キスをしたんです。大人しく私と結婚しましょう」
「それは理解さんが無理やり(ゲーム機を取ったから事故で)しただけでしょ!」
「は?」
「は?」
圧のあるユニゾンが横から聞こえた。
「理解。信じてたのに……最低」
「さっき言ったの冗談のつもりだったのに……見損ないましたよ理解さん」
「変態」
「理解さんへの見る目変わるなぁ」
「天彦二号」
「理解さんの監視も家事のうち」
テラさんと依央利さんが代わる代わる理解さんを罵倒している。
当の本人は二人の言葉を全然気にしていない。
「安心してください。幸せにしますから」
「いや、そういうのはもう少しお互いを知ってから」
「ではお互いを知る期間を設けましょう。そしてそれが過ぎたら結婚しましょう」
体の良いお断りの文句に対して、理解さんは大真面目に返してきた。
結局、理解さんの説得には三時間かかった。
その間に、依央利さんとテラさんの誤解も解いておいた。
とても、疲れた一日だった。