【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第18章 心の壁【3月】
side.仁王雅治
やっぱり…。
何となく、名前の返答は分かっていた。
溜息を吐きながら、視線を下げる。
彼女は頑固だから、一筋縄ではいない。
さて、どうしたものかのぅ…。
空気を察してお互い黙りこむ。
暫く沈黙が続いた後、俺は顔を上げて名前に言い切った。
「お前さんは、ここに住んで立海に通う」
「へっ?」
彼女は困惑した顔を見せる。
君は、俺が情けない男だと知っている。
だからこそ、いつも俺の我儘を微笑みながら聞いてくれていた。
一度も拒否をされたことはない。
拒絶が怖くて我を出せない。
心を閉ざす。
以前の俺に良く似ている。
名前はいつも閉ざしている心に、俺だけのスペースを作ってくれていた。
君が俺に作ってくれる着かず離れずの心の距離はとても心地が良い。
いつも「俺には名前がいる」というような安心感を与えてくれる。
君が与えてくれたのは無償の愛。
だからこそ、彼女は絶対に俺を求めない。
でも今度は俺が支えてやりたい。
閉ざしたその心に踏み込みたいんだ。