【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第15章 もう隣にいない【2月】
side.名前
そんな時、雅治くんと出会い、恋に落ちて愛を知った。
本気で人を好きになったことがないと言った彼が、最後にくれた言葉。
『俺、名前のこと好いとうよ』
私は怖かった。
彼の言葉を信じることも、自分の本当の想いを伝えることも。
あの時、自分も好きだと、帰らないでと、泣いて縋れば私たちは離れずに済んだの?
なんて浅ましい考えまで浮かんできてしまう。
ぽっかり空いた胸をなんとかしようと通院した帰り道。
そんな自分に苦笑しながら、一人始まりの場所に来た。
どうやら回復傾向にある私の病。
彼は私のヒーローだ。
DVの彼氏とも、
パワハラ上司とも、
その他諸々の男たちとも縁を切り、
身軽になった私は大きく深呼吸をする。
「さて、信じて荷造りしてみようかな?」
もう隣にいない彼に、また逢いたい。