【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第7章 世界一不思議な人【1月】
side.仁王雅治
「ま、さはる、くん?」
戸惑う名前などお構いなしに、舌を這わせる俺。
名前は身動ぎ、小さな抵抗を見せる。
「、!!ちょ、待って!!どうしたの!?」
「俺とおる時くらい、俺んこと考えて」
「………」
「…俺だけを見とって。他の、誰んことも考えんで」
「………」
何言っとんじゃ、俺は。
思わず零れた言葉に自分でも困惑する。
独占欲を表す言い様。感じたことのない気持ちは“嫉妬”だ。
そんな自身の気持ちに驚く俺は、羞恥から行為を止めて彼女の上にドサッと覆い被さった。
「…すまん」
「ううん」
「…すまん」
「いいよ。でも、どうしたの?急に」
感情に任せて酷いことをした。
戸惑いがちに聞いてくる名前。
こんな行為をしたからには、その問いに答えなければならない。
やはりこういう状況になると、巧みな言い訳が思い浮かばない。
そして俺の口から出たのはとんでもなく情けない言葉だった。
「…どこにも行かんで」