【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第7章 世界一不思議な人【1月】
side.仁王雅治
「…何これ?」
「俺んちの合い鍵」
「何で?」
「遊びに来て欲しいから?」
「…私、家事とか苦手だよ?」
「くくっ。誰も頼んどらんぜよ」
「そういうこともしないよ?」
「それも頼んどらん」
ある休日。
名前と昼飯という名のデートをしている時に合い鍵を渡すと、怪訝な顔をされる。
合い鍵の理由は、休日だけじゃなく、もう少し2人の時間を作りたかっただけ。
素直にそう告げると、首を傾げながらも納得したように「ふーん」と受け取ってくれた。
名前の仕事が終わった後や、俺が仕事でも彼女が休みの日。
名前が家にいてくれると思うだけで、俺としては嬉しいのだ。
ただ警戒心の強い名前のことだから、使うのはだいぶ先のことになりそうだな、とぼんやり考える俺は、食後のコーヒーを啜った。
「じゃあ、この後、お家に行こう?」
「えっ?」
「たまにお泊りしたいし、必要なもの揃えたいんだもん」
「…うえっ!?」
一拍おいて変な言葉がでてしまった。
意外にも合い鍵に興味を示してくれた名前。
驚いた俺は目を丸くしてしまう。
なあ?
俺、ちっと期待してもええんか?
こうして少しずつ俺と名前の距離は縮まっていった。