【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第40章 戦う女達【6月】
side.幸村精市
女子20人の取っ組み合い。
それはそれはひどい戦いだった。
しかも1対20。
普通この数ならリンチになると思う。
実に卑怯だ。
しかし名前は、それに怖気づく気配は全くなかった。
髪を引っ張られようが、叩かれようが、20人相手に怯むことなく必死に戦っている。
そんなパワーがあの小さい身体のどこに隠されていたのだろう?
俺は今日、また新しい彼女の一面を見た。
異様な光景に呆気にとられている俺達は、黙って見ているだけだった。
ドンッと両肩を押されて、後ろによろめく名前。
その背後には机や椅子が重なっている。
そこからはスローモーションのようだった。
「危ないっ!!」
大きく響く誰かの叫び声。
反射的に動き出す俺の身体。
徐々に倒れる名前。
一瞬の出来事なのに、ゆっくりゆっくりと目に焼き付けられた。
必死に手を伸ばすが届かない。
くそっ!!
間に合わない!!
名前が突っ込んでしまう。
ヒヤリとした瞬間だった。