【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第3章 彼の事情【1月】
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そうだ、彼は寂しいんだ。
仲間に会いたいんだ。
帰りたいんだ。
「もうすぐ高3だったんじゃ。最後の大会だったんじゃ」
「…」
「あいつらと、…あいつらとできるテニスも最後だったんじゃ」
「…」
彼の悲しみが伝わってきて、胸が張り裂けそうだった。
「何で俺だったんじゃ。他のやつでもええはずじゃろ」
「…」
「何で俺だけ…っ、ううっ」
「…」
座り込み嗚咽を漏らす仁王さん。
私はそんな彼をそっと抱きしめることしかできない。
涙する彼の頭を撫でながら思う。
彼はどうしてこちらの世界に来たのだろう。
どうして私と出会ったのだろう。
どうして私だけが彼を覚えていたのだろう。
仁王さんが泣きやむまで考えたが、結局、答えがでることはなかった。