【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第3章 彼の事情【1月】
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結局、その後荷物をまとめて帰ろうとしている仁王さんに見つけてもらうまで、私から声をかけることはなかった。
外に出ると、あたりは真っ暗になっていた。
沈黙の中、2人で駐車場まで歩いていると、仁王さんが力なく話をふってきた。
「なあ?」
「うん?」
「俺って、一体何者なんじゃろうな…」
彼の心の内を呟くように。
私は、何故か無性に泣きたい気持ちになった。
彼の質問の意図が分からない。
でも、胸がしめつけられるような衝動は、彼の悲しみ、苦しみが伝わってきてたからだと思う。
私は当然の如く答えた。
「…仁王雅治、でしょ?」
「…そうじゃけど…」
空を見上げ、彼は暗闇の中、一筋の涙を零した。
「…もう、あいつらには会えんのかな?」
「…」
「もう、一緒にテニスできんのかな?」
「…」
その後、俯く仁王さんに掛ける言葉が見つからなかった。
今日初めて会った彼が時折見せた、複雑そうな、悲しそうな顔。その原因に気づいてしまったのだ。