【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第3章 彼の事情【1月】
side.名前
バスと電車で帰るらしい仁王さんに、自宅まで送ると言い、車を走らせる。
車内は終始沈黙だった。
「ありがとな」
「いえ」
「じゃあ、また…な」
自宅に着き、車の戸を閉める仁王さん。
気まずさ故なのだろうか?
目を伏せられていたため、顔を見ることさえできなかった。
自室に帰ろうとする彼の背中を見つめる。
何でこんな気持ちになるの?
本当に泣きたいのは、仁王さんの方なのに…
このまま彼を帰してはいけない。
そんな気がする。
急いで車を降り、彼の元に駆け寄る。
呼び止めようと思いっきり叫んだ。
「仁王さんっ!!」
「、!!」
私の大声に驚いて振り返る仁王さん。
近所迷惑など考えずに大声を出してしまった。
でも、今はそんなことどうでもいい。
「私には…仁王さんが必要なんだと思う。だから出会った」
「、!!」
「必要なんです」
私の中だけだけど、貴方は“立海の仁王雅治”だから。
特別だから。
この出会いに意味があると思いたい。
仁王さんの目を見て私は言った。