• テキストサイズ

【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】

第3章 彼の事情【1月】


side.名前



「楽しそうな顔してる」



そう。

彼は微笑ましいくらい楽しそうに、それでいて真剣にプレイしていたのだ。

あれが、本来の彼のテニスなのだろうか?

分からないけれど、私は彼に魅せられていた。



「このゲームでラストでーす」



館内に響いた声に、終わりの時間なんだと気付かされる。

かれこれ1時間くらい彼のプレイを見ていた。

たぶんこのスクールでは彼が一番強いと思う。

気持ちがいいほど、キレイなテニスだった。
そして目を奪われてしまうくらいかっこよかった。


女の子だったら騒ぐわけだ。


そんな彼は現在ゲームが終了し、コート整備をしていた。

これが終わったら彼に声をかけよう。

そう思った時「お兄ちゃん!!」と一人の少年が仁王さんの元へ走って行く。



「ん?なんじゃ?」

「どうしたら、お兄ちゃんみたいに強くなれますか?」



彼は少年と目線が合うように屈んだ。

その表情はとても複雑そうだった。



「そうじゃなー。まあ、たくさん練習するのは当たり前じゃき。他には目悪くならんようにして、テニスを楽しんで、テニスをしとる友達を大切にすれば、上手くなる」

「本当?」

「…ああ、本当じゃ」

「ありがとう!お兄ちゃん」



お礼を告げて、走り去って行く少年を見つめる仁王さん。

さっきまで、あんなに楽しそうにプレイしていたのに、何で?


何で…

そんな今にも泣きそうな顔をしているの?



声をかけられず、私はただ呆然とその光景を見ていることしかできなかった。


 
/ 236ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp