【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第26章 注射は誰でも嫌だよね【4月】
side.幸村精市
俺の手に必死に縋りつく名前に、何とも言えない感情が込み上げる。
うう、可愛い。
「名前、大丈夫だよ」
「俺がついてるよ」と言いかけたが、手を握っている時点で既に周りの視線(とくに女子)が痛いため、それはやめておいた。
俺たちテニス部は顔立ちが良いのが揃っているため、人気が高い。
苛めなどもあるようだけど、名前に手を出された日には、女子だろうと今はボコボコにする自信がある。
それくらい今の名前は可愛い。
「はい、終わりましたよー」
「はあー」
「よく頑張ったね」
「うん、ありがとう」
「なんだか微笑ましいわね。仲良くね」
「はい、ありがとうございました」
ちょっと勘違いをしている看護師さんに頭を下げて、名前の手を引いて歩き始める。
そして、そのまま名前と一緒に教室の中へ入ると、突如如上がる女子のイエローな声。
キャーではない。
ギャーだ。
うわ。
何だよ。
耳が痛いじゃないか。
女子に嫌悪の眼差しを向けながらも、隣にいる名前を心配する。
そこでやっと、未だ繋いだままだった手を思い出した。
あ…。