【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第3章 彼の事情【1月】
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私が抱いた疑問も、今は聞いてはいけないような気がしたのだ。
お互い黙りこむが、嫌な沈黙ではなかった。
私も同じように海を見る。
今じゃなくてもいい…
いつか聞けたら…と思う。
『もう本当の自分、見つけたんでしょ?』
どのくらいぼんやり海を見ていたのだろう?
なんとなく仁王さんに見られている気がした。
パッと隣に視線を移せば、彼がしげしげと私を見ていたのだ。
ドキリと心臓が跳ねる。
「、!!な、何か?」
「いや、お前さん。これから俺の側におってくれんか?」
「えっ?」
「お前さんだけが俺を知っとる。これは何かの縁じゃろ」
彼の言葉に「縁?」と暫く考えってしまった。
側にいる?
私と仁王さんの縁?
眉間にしわをよせて、うんうん考えてみたけど分からない。
ピンとくるものが思い浮かばず、私は首をかしげる。
私に「まあ、そんなに焦って考えんでもええじゃろ」と連絡先だけ交換して、その場は解散となった。
その後、自分が一睡もしてないことに気づいた私は、ささっとお墓参りを済ませ帰宅する。
仁王さんと私に関係するもの、それは一体何なんだろう?
ベッドに横たわり悩んでみるも、丸一日寝ていないせいか、すぐに眠気が襲ってくる。
もしかしたら今日の出来事こそ夢かもしれない。
私の意識は徐々に薄れていった。