第1章 愛しの及川さん
6.初めての人でいて欲しいの
「…徹…ごめん」
「やっぱり?こんなカッコ悪い及川さんは、流石に抱けないよね?」
徹は、嘘の笑みを浮かべた。
違うの。
そうじゃないの。
恥ずかしいけど、言わなきゃ伝わない。
私にはそんな笑顔で隠さないで欲しいの。
「その…私…初めてで…」
「えっ?」
「だから、抱き方とか…分かんない。ごめん」
「そっか」
正直に伝えると徹は嬉しそうに笑う。
私、変なことを言った?
「じゃあ、今日のキスも初めて?」
「うん」
「そっか」
徹は私を抱きしめた。
「謝ることじゃないよ。寧ろ嬉しい」
「そういうもの?」
「そういうもの」
彼が喜んでくれるなら、私も嬉しい。
「…じゃあ、抱かせて?」
耳元で艶っぽく囁かれる。
それだけで私は虜になるの。
「いいよ」
承諾すると、深いキスをされる。
徹に抱き上げられ、膝の上に座らせられた。
告白もキスもセックスも、徹が初めて。
全部、貴方が私の初めての人でいて欲しいの。