第1章 愛しの及川さん
5.甘えて欲しいの
「。今日、俺の家寄ってくれる?」
「いいけど、疲れてないの?」
「平気」
「分かった」
「じゃあ、部室で待ってる」
「うん」
徹は私の手をすり抜けて、部室棟へ走っていった。
やっぱりその背中は儚くて、涙が溢れそうになる。
私より徹の方が苦しい筈なのに。
きっと他の部員の前ではケロッと見せているに違いない。
切なくなる。
急ぎ片付けを済ませ、部室で待っている彼へ連絡した。
帰り道。
徹は鼻歌を口遊ながら私の手を引く。
妙にご機嫌だ。
でも徹が嬉しいなら私も嬉しい。
だから、その笑みを曇らせないで。
徹の家は、明かりがついていなかった。
「一人なの?」
「うん。だから呼んだ」
「そっか」
「に抱いて欲しくて」
………ん?
甘えん坊のように、くっついてくる徹。
そんな仕草も可愛いけれど、どう言う意味なんだろう?
良く分からないけれど、身体を求められてる?
期待には応えられない。
けれど、私は貴方に甘えて欲しいの。