第1章 愛しの及川さん
4.我儘を言って欲しいの
「好きだよ。徹」
彼の頬を包んで、触れるだけのキスをした。
これが私なりの慰め方。
愛情表現なの。
本当は徹の辛さを取り除きたい。
でもそれは無理だから。
せめて愛を注がせて。
「俺もが好き」
「そっか」
こんな女々しい徹でも、私は大好きなの。
フッと笑うと、徹も泣きながら嬉しそうに微笑んだ。
「ねえ?徹」
「うん?」
「私の前だけでは、自分の気持ちに素直でいて?」
「うん」
「徹が泣いても、怒っても、どんな我儘でも聞くから。それくらい好きだから」
徹の全部を受け止めたい。
「じゃあ…もう一回キスしてくれる?」
「いいよ」
私はもう一度、徹に触れるだけのキスをする。
好きな人に好きと伝えられる事は、
好きな人に触れられる事は、
とても幸せな事。
「もう一回」
徹の望みなら何でも叶えてあげたい。
だから貴方にはたくさん我儘を言って欲しいの。