第1章 愛しの及川さん
21.貴方の側で生きていきたいの
桜の季節になった。
高校を卒業してから早2年。
予想通り徹は海外へ渡った。
二人で過ごした幸福な日々は、幻だったのかもしれない。
徹。
今、何してる?
私はここにいるよ。
ずっと待ってるよ。
日本の桜は綺麗だ。
写メを撮って徹に送ると、直ぐに電話が鳴る。
ディスプレイに表示された、愛しい名前に胸が高鳴った。
『もしもし、?写真ありがとう。今どこいるの?』
「えっ?あ、今は、あの公園」
『俺がプロポーズした公園?』
「えっ?あ、うん」
『何?その返事。忘れたの?』
「…忘れてないよ」
忘れてない。
忘れられるわけがない。
徹のいない毎日がどんなに空虚だったか。
『俺がいなくて寂しい?』
「寂しくないよ」
『嘘だね。じゃあ何で?そんな泣きそうな顔してるのさ』
「えっ?」
辺りを見渡すと、益々男前になった徹がいた。
「えっ?何で…」
「2年経ったから、迎えに来た」
ふわりと笑う愛しい彼に、抱きしめられる。
「ただいま。」
「おかえり。徹」
今度は私の我儘を聞いて欲しい。
私は貴方の側で生きていきたいの。