第3章 懐 想 [煉獄杏寿郎]バレンタイン
しかし待ち遠しい日ほど、なかなかこない。
何度カレンダーを見ても、バレンタインまではあと4日ある。
時間もなかなか進まず、何度腕時計を見てもさほど時間は進んでいない。
『煉獄、ソワソワしてんじゃねぇよ。何度見たって同じだ。』
この男はいつの間にか俺を見ていて、俺に特別な感情があるのではないか…と勘違いしてしまう程だ
『宇髄…君は俺のことを良く見ているが…まさか…』
『んなワケねぇだろうが!
お前な、図体でかいから目立つんだよ!ソワソワしてりゃあ』
『いや、それは君には言われたくないな。俺より宇髄の方が背が高いからな!』
そんな宇髄のおちょくりを受けながら、ゆっくりと進む日々を過ごした。
祝日と土日を挟んだが、やはりはなには会えなかった。
彼女も忙しいようで、電話やLINEもろくにできないまま14日を迎えた。
今日の学校へ向かう道はほとんどが青信号で、まるで急ぐ気持ちをわかってくれているのではないか?
などと都合良く思えてしまう程、浮かれている。
『いよいよ…か。』
カレンダーを何度も見た
間違いなく今日は14日
何事もなく過ごせるように…と祈りつつ教鞭を執った
昨夜のはなからのLINEで、18時には杏寿郎の部屋へ行けそうだとのことだった。
一日何の問題もなく授業を終え、少々の残業はあったもののこの調子なら、そんなに待たせずとも帰宅できそうだと心が踊った。
あとは無事に自宅に着くだけ。
しかし、そんな時程、折悪しく…
帰宅を急ぐ杏寿郎の目に飛び込んできたのは、キメツ学園の制服を着た生徒と他校の生徒がケンカしているところだった。
見つけてしまった以上見過ごせない。
車を路肩に停め様子を見に行った
『俺が一番強ぇっつってんだろぉがぁ!』
怒号が聞こえ、急いで駆け寄り殴りかかろうとする腕を掴むも、既に何発かやり合った後のようだった。
『君達!何をしている!』
『んぁ?こいつが先につっかかってきやがったんだ!』
どうも話を聞くと、ケンカが強いと評判の嘴平少年に他校の生徒がつっかかってきたとのことだった。
『ケンカはいけない。競うのなら正々堂々とだ!君も体力が有り余っているなら剣道部に入るといい!鍛えてやろう!』
『うるせぇ!行こうぜ!』