第3章 懐 想 [煉獄杏寿郎]バレンタイン
萎えた…と言いたげに去って行く生徒を見送り、視線を嘴平少年に戻せば殴られた瞼が腫れ上がっている
『病院へ行こう。手当てしてもらうぞ!』
『行かねぇ!こんなん痛くも痒くもねぇ!』
ポッコリと腫れてしまい明らかに痛そうだ
『いや、手遅れになってからでは遅い!行くぞ!』
嫌がる少年を無理矢理車に乗せ、病院へと向かった。
病院に着くと、学校へ連絡し保護者への連絡を依頼したが、どうも来てくれる者がいないらしい
こうなれば、俺が付き添う他ない
はなにLINEで連絡をし、診察を待った。
時間は既に19時を過ぎたところ
なかなか診察に呼ばれずにいると、大きな影が俺の前に現れた
『あーあぁ…派手にやられたもんだなぁ?当分片目で過ごすことになりそうだな。』
『宇髄!なぜここに…?』
『学校で我妻に説教してたらよ、お前が大変だって聞いたから来てやったわけ。彼女と約束してんだろ?行ってやんな。俺が付き添い代わってやるよ。』
昔からこの男は普通よりも気が効くところがあった
いつだかの遠い記憶だが…そんな気がした
『悪いな!恩に着る!嘴平少年、お大事にな!』
俺は一目散に車へ向かいはなに電話を鳴らした。
しかし、聞こえてくるのはコールのみ
料理中か?
LINEの既読はついている
怒ったか?
いや…こんなこと怒るような彼女じゃない
ザワザワと不安が生まれてきた
エンジンをかけ自宅へ向かう
こんな時ほど信号に引っかかる
逸る気持ちを抑え、なんとか自宅まで着いた
メゾネットタイプのアパートは一棟ずつに駐車場がついている
俺の自宅の前には見覚えのある車が停めてある
『はな……』
ホッとしたのも束の間、顔を見るまでは安心できないと急いで中へ入った
『はな!!いるのか?』
目の前には座り込んでしきりに手を気にするはながいた。
「おかえりなさい、早く帰れたのね!」
『どうした?』
「あ…これね、やけどしちゃって…冷やしてるの。杏寿郎さん生徒さんは?」
困った様に笑う彼女に安心して、力が抜けてしまった
『大事はないのか?……あぁ、生徒は宇…同僚が付き添いを代わってくれてな』