第1章 誘 惑 の 媚 香 [煉獄杏寿郎]
『俺は構わん。それよりこのまま台所へ行くのでは冷えたままになってしまう…少し、このまま温めさせてくれ。』
同じ寒空の下にいたのに、杏寿郎の体は温かい。
「杏寿郎様。私、本当に幸せです。今日杏寿郎様と初日の出も見られて、こうして杏寿郎様を感じられて……」
はなは顔を後ろへ向けると、杏寿郎が唇を重ねた。
優しい口づけから、食むように求める口づけに変わる。
「んっ…はぁ…ん…」
杏寿郎は前を向いたままのはなの体を自分の方へ向けた。
するとはなの腕が杏寿郎の背中へ回った。
『はな…』
杏寿郎が名前を呼ぶと、はなが唇を少し開いた。
するとすかさず杏寿郎が舌を滑り込ませ、クチュクチュと音を立てて口づけが交わされる。
「んんっ…あっ……はぁ…んんっ…」
『そんな甘い声で俺を煽ってくれるな……まだ日の出を迎えたばかりだと言うのに……』
止まらない水音が、二人の気持ちの昂りを表している。
「んんっ…もう…はぁ……んっ……」
『もう止めろ…とな?』
「んっ…はい……」
『ならば、君から止めてくれ……』
自分から止める気はないと言わんばかりに、はなの腰をぐっと引き寄せた。
冷たかった鼻先は、深い口づけによって上がった体温でいつの間にか冷たさを感じなくなった。
「ずる…い…はぁ……んんっ…」
このまま杏寿郎に溺れてしまいたい。
一時だって唇を離したくない。でも…そろそろおせちの支度をしなければいけないのに…
まるで磁石で張り付いてしまったようなの…
でも…このまま流されてしまったら、次を求めてしまうわ…
はなは手で杏寿郎の唇を遮った。
『むっ!もう少し…だめなのか…?俺は昨日から、いやずっとこうしたかった。』
月のものにあったはなは、杏寿郎との接触をなるべく避けていた。
「杏寿郎様が仰ったのですよ?止めてくれ…と」
『そうだが…昨夜君から触れる許可が降りたものの…父上も千寿郎も年越しで共に過ごしていたからな…』
だから触れることができなかった…
そう言いたげにシュンとした顔を見せる。