第2章 風 の 憂 鬱 [不死川 実弥]
『いいかァ、これできつく傷口押さえてろォ。』
そして血走った目で再び鬼を捉えた。
ピンと張り詰めた緊張感の中
シィァァァ
呼吸音がすると、床を蹴りあげ日輪刀を振り上げた
鬼もまた、不死川に攻撃しようと、腕を振り上げた。
ー風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風ー
寺が揺れる程の風が生まれると、不死川の刃は爪の様な斬撃を放ち鬼の頸をはね飛ばした。
『風を嘗めんなよォ!!』
あまりの速さに鬼の腕は振り下げられることもなく体が倒れた。
ゴロゴロと鬼の頭が転がり、焦げた臭いを放ち燃え尽きた。
『醜い鬼めェ、燃えてる姿も醜いったらありゃしねェ』
不死川は日輪刀の血を払い鞘に納刀した。
そして女の元へ駆け寄り、弱々しく傷口を押さえる女の代わりに傷口を押さえた。
『止まってくれェ。もうすぐ仲間がくる。それまで持ちこたえてくれェ』
漆黒の髪がはなと重なり、ドクドクと流れる血がはなの様な気がして焦りばかりが募ってしまう。
『風柱!!』
爽藾の知らせにより隊士達が駆けつけた。
『医療班はどうしたァ?』
血走った目を向けられた隊士は怯んでしまい、後退りしてしまう。
『いっ今、向かっています!もうすぐ到着するかと…』
『くそがァ…』
あんな所で立ち止まらずに到着していれば…
嫉妬に燃えていた自分の姿を思い出し情けなくなった。
『風柱!医療班が到着しました!』
『おせェ!早くしろォ!こいつの首からの出血なんとかしやがれェ』
医療班がすぐさま処置に取り掛かり、女は一命を取り留めた。
『かっ風柱、こっこちらはもう後処理のみですので…』
隠が小さくなり不死川の元へやってきた。
『そうかよォ。じゃあ俺は次行かせてもらうぜェ。そいつはしっかり保護しろやァ』
不死川はくるっと向き直りその場を後にした。
『おいおい、今日の風柱おかしくねぇか?殺気立ってるはいつもだけど…』
『風柱も人間だ。色々あんだろ?』
そんな隠達の会話が耳に届くも、振り返る余裕もない程に気分が昂ってしまった。
なんなんだァ!鬼を斬れば気が済むと思ってたのによォ
あいつに似た…あの漆黒の髪……まるであいつが怪我してるみてぇで、気分がわりぃ
『くそっ…』
不死川は羽織をなくした体に冬の風を感じ、深呼吸をして冷たい空気を取り込んだ。