第2章 風 の 憂 鬱 [不死川 実弥]
江戸切子にトクトクとどぶろくと甘酒が注がれる
瑠璃色に白濁した液体が注がれると、また違った美しさがある。
辺りをふわっと酒の香りが包んだ。
宇髄が乾杯と声を上げる。
一気に喉に流し込めば…なにやら違和感を感じる。
『「んっ?」』
四人の声が重なった
酒…じゃねェ
ってことは…はなのは何なんだァ?
おい…まさか…
はなの様子を伺うと、顔をしかめながら大丈夫だと言っている。
あいつ、酒なんか飲んだことねぇだろォ
あんなほっせぇ体に酒なんか入れちまって大丈夫なのかァ?
いや…俺がこんな心配したって…あいつには煉獄の顔しか見えてねェ
この苛立ちに似た感情を治めるには甘酒でちょうど良かったのかもしれない。
しばらく、はなの様子を伺いつつ、はなの希望もあり
改めて乾杯する。
どぶろくが喉を通れば、久方ぶりの酒に体がほんのり熱くなり、高揚するような気がした。
他の二人もそうなのか、話に花が咲く。
そんな様子をニコニコと見つめるはなの目線の先には杏寿郎がいる。
その瞳は一時も目を離したくない。
そう言っている様で、どこを見て良いのかわからなくなった不死川は視線をもて余してしまう。
すると宇髄が本題に入る…と珍しく真面目な顔をして言った。
あぁ、こいつは音柱 宇髄天元だと改めて思い知らされる表情だ。
そんなぴりっとした雰囲気を察知したはなは中庭を見てくると出て行った。
『長期の任務になりそうだ。そう簡単には鬼も尻尾を出さねぇだろうからな。』
宇髄はそれだけ言うと、二杯目のどぶろくを喉へ流すともう一杯どうか?と勧めてくる。
『いらねェ。てめぇそんなに呑んで任務に差し支えないんだろうなァ?』
宇髄を一喝するが、酒が作用しているのかまたはなの話を持ち出してくる。
あァァ聞きたくねェ!!こいつ酔ってんじゃねぇかァ?さっきの真面目な顔はどこいきやがったァ
不死川は意識を逸らす為に中庭に視線を移した。
中庭では空を仰いでいるはなの姿がある。
杏寿郎の静止により宇髄が落ち着き、やっと音柱として話ができそうな顔になった。