第10章 涙の向こうに見た青藍の瞳[冨岡義勇]
柱は、私たち一般の隊士とは比べものにならないくらい鍛錬を重ねてきている。努力の質も内容も次元が違う。血反吐が出るような鍛錬で己を叩き上げてきた人たちだ。到底足元にも及ばない。
水柱だってきっとそう。だからどうしてそんな事を言うのかはわらないけど、私にとって水柱は、窮地を救うことができる偉大な人と言うことには変わりない。
それから水柱は、厨の水瓶にも水を貯めてくれて何不自由なく過ごせるように整えてくれた。
「料理はできるのか」
「いつも自炊しているので料理はできます!」
「そう言う意味ではない。手元が見えなくて包丁を扱えるのか」
「はい!! 私も一応剣士の端くれです。刃物に関しては大丈夫です」
「そうか」
なるべく自分でできることはしたい。両親を失ってから一人で生きて来た私は人の優しさや恩になれていない。
だから本当は水柱の優しさもほんの少しくすぐったい。
けれど、それは心を豊かにしてくれるものだと知ることができた。
「本当にありがとうございました。ここからは何とか自力で頑張ってみます」
そう啖呵を切った私に、「指を切り落とすな」といって水柱は帰って行った。
その後ろ姿を胸に描きながら、深く頭を下げた。