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夜空に輝く星一つ。【鬼滅の刃 短編 中編 】

第9章 凪の奥の激情[冨岡義勇]



 言葉を探しながら、はなを抱き寄せる。
 何も纏っていない体から、体温がゆっくりと伝わってくる。まるで地をゆっくりと濡らす慈雨のように。
 その温もりに触れた途端、胸の奥に溜め込んだものが溢れ出した。

「はな、お前が好きだ。お前を幸せにしたい」
  
 たった一言なのに、喉が焼けるように痛い。言葉だけでは足りなくて、はなを抱きしめる腕にも力が入った。

 はなは俺の腕の中で嗚咽混じりの震えた声で答えた。

「私も義勇さんをお慕いしています」

 はなの言葉を聞き、それ以上は抑えられなかった。
 息を継ぐ暇も与えないような、貪るような口づけをし続けた。
 
「んんっ…ふっ…ん」

 洩れる声までも絡めとるように重ねた口唇から伝わる温もりは幸せの温度なのかもしれない。
 人肌はこんなにも心地よいのか。血の臭いと鬼の冷酷さに染められた己が、まるで浄化されていくようだ。
 手に触れるもの全てが温かく愛おしい。

「はな、触れるぞ」

「はい……」

 何も纏わない肌は、滑らかで柔い。着物を脱いだ体は線が細く、男の体とは比べ物にならないほど弱々しい。

「んっ……」

 双丘を揉みしだき頂きを指で弾くと、はなは無意識か、舌を深く絡め腕を首に回してきた。
 片手で隊服のボタンを外すも、焦りからか手元が狂う。全てのボタンを外し終えると、はなが肩から隊服を落とした。

「随分と積極的だな」

「私ばかり肌を晒しているのは恥ずかしいからです! それに…義勇さんに触れたいから…」

 そんな事を言われてしまい、隊服の下のシャツさえもどかしくなった。
 はなに馬乗りになったままシャツを脱げば、腹の筋肉の線を細い指が辿っていった。

「綺麗…」

 恍惚とした表情をしたはなが呟いた。

「傷のついた体だ。良いものでもないだろう」

「いいえ。だってこれは義勇さんがたくさん鍛錬して、たくさんの命を救ってきた証です」


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