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夜空に輝く星一つ。【鬼滅の刃 短編 中編 】

第9章 凪の奥の激情[冨岡義勇]



 義勇さんの羽織と裁縫道具を持って腰を下ろすと、宇髄さんは興味ありげに手元を覗いてきた。

「冨岡の羽織か?」

「はい。戦闘で裂けてしまったので直しているのですが、さすがに継ぎ足さないと綺麗に直らなそうで」

「へぇ。あいつ地味な癖して羽織は派手だよな。何か意味があるんだろうけどさ」

「そうですね。とても大切なもののようなんです。だから綺麗に直してあげたくて」

「ふーん。あいつのことよく見てんだな」

「えっ!? だってお世話になっている身ですし、少しでも義勇さんのお役に立てたらと思っていたら自然と目で追っていたと言いますか…」

「けなげだねぇ」

「でも、義勇さんのことよく知らないんです。鮭大根が好き、この羽織をとても大切にしている。それくらいしか知らない…心を開いてもらえてないのかなって、寂しくなるんです」

「そう言うことなんだろうって言ったろ? あいつがはなちゃんを屋敷に置いてるってことは、それが心を開いている証ってことだ。口では言わねぇが、態度で示してるってことだ。まっ、言わなきゃわからねぇこともあるよなぁ?」

 そんなこと、考えもしなかった。ここに置いてもらえているのは、ただただ義勇さんの優しさだと思っていたから。

「宇髄さんこそ、義勇さんのことよく見ていらっしゃるのですね」

 私の言葉に、宇髄さんは脚に頬杖をした姿のままこちらを見て酷く優しい眼差しで言った。

「仕事柄な。観察は得意なわけよ。でもなぁ、それだけじゃねぇ。共闘するやつらの事はどんな些細なことでも情報として入れておきたい。そうすると、いいとこばっか見えてくんだよ。まぁ、どんなに観察しようがいいとこひとっつもねぇ悪党もいるけどよ。俺の仲間たちは、誰もがすげぇいいやつなんだよ」


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