• テキストサイズ

夜空に輝く星一つ。【鬼滅の刃 短編 中編 】

第8章 evergreen[不死川実弥]



 温かかった手は少しずつ冷たくなっていった。でも、その手を離すなんてできなくて、たった二人の時間は静かに儚く、音を潜めて過ぎて行った。
 常緑樹の葉がキラキラと輝いている庭を見れば、たくさんの思い出たちが走馬灯のように過ぎていった。

 春は桜の木の下でお花見をした。殺風景だった庭にお花を植えてよく二人で水やりをした。夏はスイカを食べて種を植えたり、線香花火でどちらが長く火を灯していられるか競ったり。ラムネもよく飲んだな。秋は落ち葉を拾って焼き芋をして、お芋が好きだった仲間の話をしてくれた。冬は積もった雪で雪合戦とかまくら作り。まるで子どもに戻ったみたいに移り変わる季節を楽しんだ。

 庭にはどんな厳しい寒さでも葉を枯らすことなく佇む常緑樹が真ん中に植っている。実弥さんはこの木が大好きだった。よくその幹にもたれかかって、そよぐ風を感じていた。青々と茂る葉を下から眺めては何かを懐かしむように目を細めていた。
 きっと、失った家族や仲間たちに想いを馳せていたのだろうことはわかっていた。
 青々と茂り、枯れることを知らない葉はまるで実弥さんの想いのようだ。

「実弥さん。ありがとう──。大好き」
 
 風に身を任せる葉の音が返事のように耳に届いた。見上げた常緑樹の葉は、あの日と同じ青さで輝いていた。きっと、あなたの想いはこれからも褪せることなく、私の中で生き続ける。




 
/ 204ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp