第8章 evergreen[不死川実弥]
俺の手を胸に持っていくはなは、今まで見た事のねぇ女の顔だった。
女は褥の中ではこんなに色づくのか。
「触って?」
「どうなっても知らねぇからなァ」
はなの体はどこも柔く、野郎の筋ばった体とは大違いだった。色事の知識は豊富なわけじゃねぇが、はなの反応を見ながらいいところを探すのは容易いことだった。
「んっ…そこっ…ぁ…」
「ここか。息が上がってらァ」
「言わない…で」
太腿の付け根から、陰裂に触れてみればはなの声は高くなった。眉間に皺を寄せて腰を浮かせるはなの中に指を埋めた。
指が欠けたことを、今初めて悔やんだように思う。こいつの体に触れる指が二本もねぇとはなァ。
布団を二組敷いて、並んで眠ることが常だった。好いてる女が横にいて、何も気を起こさずにいられるほど俺はできた男じゃねェ。
はなの肌を想像しちゃあ抜く日だってあった。それが今俺の腕の中で肌を晒している。
「はな、顔見せろ」
「ぃや…恥ずか…し」
「あんな大口叩いてクセに随分しおらしいじゃねぇかァ」
「だって…誰にも見せたことないのに…急に実弥さんに見せるなんて心の準備が…!」
こいつに触れたことがある野郎がいないことは知っていたが、いざその口から語られるとクルものがある。
隅々まで刻んでやらァ。おめぇは俺のもんだ。
顔を覆っていた手を絡め取り、頭の上で縫い付けた。
「いらねぇだろ、心の準備なんざァ。どんな姿だってなぁ、はなははなだァ。余計な事考えてねぇで俺を見ろ」
伏せた目を上げたはなに息をのんだ。こいつは、こんなに綺麗だったか…?
惚れ直すってのは、こう言うことなんだろう。
「…はい」
息も継げず身を捩るはなの唇に貪るように何度も食らいついた。舌を捻じ込み、控えめに絡めてくる舌を引きずりだした。
「んっ…ぁっ…」
唇から唾液が垂れようが、涙で頬を濡らそうが、構わずはなを味わった。
「さ…ね……み」