第8章 evergreen[不死川実弥]
一瞬、音が消えたように思えた。それは実弥さんも同じだったようで、目を見開いてじっと私を見つめた。
「これからは、守られる人になって欲しい。もう守るのは十分です。たくさん守ってきたんです。だからもう…」
言葉を紡ぎたいのに、思うように声が出なかった。出るのは涙ばかりで、実弥さんの表情すら滲んでしまって窺えない。
「俺が…守られる…?」
「こんな細腕でって思ってるでしょう? 私は実弥さんみたいに鬼を倒したりはできない。でも、実弥さんの気持ちは担える。寂しいとか、つらいとか、苦しいとか。一人で抱えるには重いものを担うことができます。それは守ることになりませんか?」