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夜空に輝く星一つ。【鬼滅の刃 短編 中編 】

第8章 evergreen[不死川実弥]



 この広い世界で、実弥さんが命を賭して闘ったことを知っている人はほんの僅かだ。でも、その営みが守られた人は数えきれないほどいる。こんなにボロボロになって、寿命の前借りまでして命を救ったのに、どうして…どうして彼の幸せは続いてくれないのだろう。鬼を恨めば良いの? それともこんな運命を下した天を恨めば良いのか。
 
 悔しくても唇を噛み締めることしかできない私に実弥さんは、一層強く抱きしめた。

「ありがとなァ」

 そう呟いた声は驚くほど小さかった。

「だいぶ涼しくなったなァ」

 ひぐらしが鳴いて、田んぼの水が風で小さく波立つ。あんなに暑かったのが嘘だったかのように、ひんやりとした風が肌を撫でていく。
 実弥さんは目を瞑って、風の声を聞いているみたいだった。

「そうですねぇ。スイカ美味しかったですね! すごく甘くて」

「おはぎもなァ」

「夏は暑いけど、スイカも食べられるし、カブトムシもいる季節だから憎めないです」

「スイカもカブトムシもねぇ夏は憎めんのかァ?」

 ククと笑う実弥さんの横顔をチラッと盗み見た。

「そうですねぇ。何か楽しみがないと暑さに耐えられません。スイカは玄弥君の好物でしたね」

「あぁ、そうだなァ。あいつもアッチで食ってんだろぉよ。食いすぎて腹こわしてねぇといいけどなァ」

「ねぇ、実弥さん。私ずっと思ってたんですけど、玄弥君がスイカを好んで食べていたは、実弥さんのためだったんじゃないかなって」

「俺のためェ?」

「実弥さんはカブトムシが好きだから。カブトムシはスイカに寄ってくるでしょう? だから、カブトムシを呼びたくてスイカを好んで食べていたんじゃないかなって思うんです」

「……そうかもしれねぇなァ。玄弥のくせに生意気じゃねぇかァ」
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