第7章 promise[煉獄杏寿郎]
葉擦れの音がやけに大きく聞こえる。
父上と千寿郎が目の前で俺を見据えている。四つの瞳は日輪に等しく、あの赤子の瞳と同じだった。
「杏寿郎、もう一度聞くが、その巾着をどこで手に入れた」
隠しても仕方のない事だ。信じてもらえるかは別として、正直に話そう。
「大正へ飛ばされました。そこではなに逢い、これを託されたのです」
「飛ばされた?」
顔を顰める父上と、目をまん丸くして驚く千寿郎。俺がいよいよおかしくなったと案じているような顔を前に、言葉を続けた。
「夢かと思ったのですが、手にこれを握っていました。ハナは俺とはなを繋ぐものだと言ったのです」
「お前、逢ったのははなだけか?」
「いえ…俺の子にも」
父上は小さくため息をつき、千寿郎は涙を溢した。
「この世には時に数奇な事が起こることは良く知っている。鬼の存在とてそうだったのだからな。そうか…はなと子に逢えたか」
「はい。まだ3ヶ月だと聞きました。成長を見る事はできませんでしたが、一目逢えただけでも十分です」
「兄上に良く似た子です。強く逞しく、誠実で真っ直ぐな」
「…お前が殉職してからの事を話そう」
そう言って父上は、巾着を見つめたまま宝物を掘り起こすように大切に語り始めた。