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夜空に輝く星一つ。【鬼滅の刃 短編 中編 】

第7章 promise[煉獄杏寿郎]



 河川敷を通り欅並木を抜けると、閑静な住宅街に出る。
 その中で一際歴史を感じる屋敷がある。それが俺の生家だ。
 大正から続く屋敷に入ると、千寿郎が必ず出迎えてくれるのだ。

「兄上! おかえりなさい! 兄上の好きなさつまいもプリン買ってありますよ」

 大正の頃と変わらず心根の優しい千寿郎だが、今はあの頃にはなかった年相応の無邪気さも持っている。
 
 今年の春に高校3年生になり受験生になった千寿郎の話を聞きながら中へ入ると、ある部屋の前で足を止めてしまった。

「兄上…?」

 この部屋は俺のハナの部屋だった。生活感に溢れた愛おしい空間だった。それについ何時間か前にこの部屋ではなに逢った。そして俺の子にも。
 それが今は虚しく開け放たれているだけだ。はなが突っ伏していた机も、裁縫道具も何もない。
 確かに存在していたはずなのに…。

 まるで足が張り付いたようにこの場から動けなかった。

「杏寿郎帰っていたのか。瑠火が待っているぞ」

 背中に降ってきた父上の声にやっと体が反応した。だが俺が振り向くより先に父上が俺の肩を掴み、くるりと反転させたのだ。

「杏寿郎! お前ハナに会ったのか!!」

 なぜ? なぜ父上はそれを知っているのだろうか。声が出なかった。あまりの剣幕で浴びせた声が大正の父を思い出させる。肩を掴む手に力が入っているのは、父上もはなを探していたからなのかもしれない。

「父上…なぜそれを…?」

「その巾着の生地は、はなが…はなが小物を作る時に良く使っていたものだ。それにその刺繍ははなが付けたものだろう」

 父上の言葉に千寿郎も俺のボディバッグに視線を移した。
 
「兄上、それをどこで…? その生地は大正の頃の物です…なぜ今それを?」

 タイムトリップしたなど信じてもらえるだろうか。思いあぐねいていると、父上の手が肩から力なく落ちた。

「俺の部屋に来い、そこで話そう」

「はい」
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