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夜空に輝く星一つ。【鬼滅の刃 短編 中編 】

第7章 promise[煉獄杏寿郎]



 情けなく溢れていた涙を拭い飛び起きた。全身に血が滾る。
 ベットからリビングへ行き電気をつけた。
 そっと手のひらを開くと、鮮やかな赤と橙色の巾着が乗っていた。
 これは俺とはなを繋ぐものと言っていた。お守りの中身は見てはいけはいと良く言うが、これもまたそうなのだろうか。

 はなが消えゆく俺に必死に握らせた巾着を、二人を引き寄せてくれるようにと祈りを込めて、ボディバッグにしっかりと結びつけた。
 
 時刻は午前1時を過ぎた。全くと言って良いほど眠気がこない。だが、今日は宇髄たちと約束がある。無理矢理目を閉じて、はなに想いを馳せた。
 あれからはなはどうしたのだろうか。二度目の別れに耐えているのだろうか。
 だが一人ではないと力強い言い切った言葉を信じてやりたい。
 大丈夫だ、はななら。そう自分に何度も言い聞かせているうちに、眠りについていた。

***

 翌朝は新緑の葉が雨を浴びたせいかキラキラと輝く美しい朝だった。
 いつもと何ら変わらない朝。ただ一つ、ボディバッグについた巾着を除いては。
 宇髄たちとの約束は19時。それまでに実家に行って父上と母上に挨拶をしよう。そんな事を考えていると、スマホからメッセージを受信する音がした。

「母上?」

 メッセージは母からだった。

 ──杏寿郎、お誕生日おめでとうございます。今年も宇髄さんたちと過ごすのでしょう? もし昼間時間があるようでしたらこちらへ寄ってくれますか?


 宇髄たちと過ごす誕生日が恒例となっているために、実家へは昼間顔を出すようにしている。実家に顔を出せるようにと夜に誕生日会を設定するところが宇髄らしい。


 ──母上、ありがとうございます。昼前には着きます。

 
 そう返信をしてスマホをボディバッグに入れた。
 この世界は心配になるほど平和だ。鬼の脅威もなければ、母も体は弱いものの比較的元気に過ごしている。
 父は酒を煽ることもなく、千寿郎も煉獄の名に縛りつけられることもない。
 はなも、こんな世界で穏やかに暮らせていたら…。
 
 トーストとハムエッグを腹に収めて、早めに家を出た。せっかくの天気だ。少し遠回りして実家へ行こう。
 ロードバイクに跨り漕ぎ出せば、初夏の風が体をくすぐって行く。
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