第7章 promise[煉獄杏寿郎]
──5月10日。
この日は俺がこの世に生を受けた日だ。
だがどうも毎年頭から抜けてしまう。しかし毎年旧知の仲である宇髄によって嫌でも思い出すのだ。
そんな誕生日を明日に控えた今日、宇髄と夕食を共にしていま。
「なぁ煉獄、明日誕生日だろ? 今年もド派手にやるぞ」
「君は誕生日を理由に宴会をしたいだけではないのか?」
「バレたか?」
悪びれる様子もなく舌を出すこの男は、スマホをスワイプさせながら『おっ!』と声をあげた。
「ここ良さそうだな。伊黒と不死川にも知らせとくか」
曲がりなりにも誕生日の主役は俺のはずだが、宇髄の手によってサクサクと予定は詰められていく。
「予約完了…と」
毎年恒例になりつつある宇髄主導での誕生日会は、最近できたばかりの焼き物の美味い居酒屋に決まった。
「君は相変わらず仕事が早いな」
「祭りの神をなめてもらっちゃ困る…って、冨岡誘うの忘れてたわ」
「一つ聞いていいか?」
「なんだよ」
「どうして君はそんなに俺の誕生日を大切にしてくれるのだろうか」
宇髄は、スマホから顔を上げて俺を見る。
不死川や伊黒、冨岡の誕生日も忘れず祝う男だが、俺の誕生日に限っては必ず5月10日に拘るきらいがある。
他の者たちは一日ズレても仕方ないと言いつつ、俺の誕生日に限っては必ず当日に祝ってくれる。それが不思議でならなかった。
「まぁ…約束したから」
「約束? 誰とだ?」
「はなちゃんと」
はな──。俺は思いもよらない名前が飛び出したことに動揺した。
はなは俺が愛してやまない女性の名だ。だが俺は百年前、彼女を置いて一人逝ってしまったのだ。
「昔な。お前亡き後、はなちゃんと約束したんだよ。もし、生まれ変わってお前に会えたら、会えた方が必ず誕生日を祝ってやろうってな。二十歳だぞ? お前が逝ったの。年を重ねる事がどれだけ貴重なことかはなちゃんは痛いほど思い知ったんだろうよ。だから必ず誕生日当日に祝うってのを守ってきたんだよ」
「はながそんなことを…」
「お前愛されすぎ」