第6章 咲 き 香 る[煉獄杏寿郎]
私の言葉に杏寿郎様は途中までにこにこと頷いた。なのにしのぶさんの名前を出した途端、不満気な顔を隠さずに眉を上げた。
「これは応急処置ですよね? とても良く処置されています。でも…一度しのぶさんのところへ行って診ていただきましょう? 私も一緒に行きます」
きっと縫ってある。うっすらと薬の香りもする。処置の仕方がとても丁寧だ。
貼ってある綿紗も肩口と言う曲線を描いている複雑な位置に、しっかり傷を覆うように貼られている。何よりあんなに動いたのに肌から剥がれる気配がない。
この処置をした人は、相当手慣れている。
きっと杏寿郎様に強く生きて欲しいと思ってる人。そんな人が杏寿郎様の処置をしてくれた。お陰で大事に至らずに済んだのだ。
「はなが一緒か…それなら悪くないな!」
むぅっと考えて、すぐに笑顔を弾けさせた。
「決まりですね!」
少し単純で、時折り甘えたような事を言う。
こう言うところがとてつもなく可愛いのだ。