第6章 咲 き 香 る[煉獄杏寿郎]
肩を落とすはなの横に座り直し、机の上にあるおかずを片っ端から口に運んだ。やはりどれも美味い。
旬の物は栄養価も高くなると聞く。俺の体を思い並べられた品々は、全て腹に収める。
「美味い!! もう一杯もらえるだろうか!」
米粒一つ残っていない茶碗を差し出すと、はなは喜んで茶碗を受け取ってくれる。
「はい!! まだたくさんあるので、いっぱい召し上がってください」
***
腹は満ちた。胸も満ちた。──あとは。
「あっ…やぁっ…」
「はなっ…」
大きな肘掛け窓いっぱいの桜を愛でながら、細い腰を掴んで腰を打ち付けていた。
夜桜まつりのあと、中庭に植った桜を部屋から眺めることができる宿へはなを連れてきた。
老木でありながら絢爛に咲き狂う桜は、部屋の中にまで花弁を降らしていた。
大きな開口の肘掛け窓から見える桜を愛でるハナを、俺は後ろから抱きすくめて、一枚ずつ着物を剥ぎ取った。
怪我を悟られないよう、後ろからはなの好きなところを執拗に攻め立てた。
向かい合わせで肌を重ねたい。だがはなは、怪我に気付けば俺を嗜め、最もらしい理由をつけて抱かせてはくれないだろう。
そんなの耐えられるか。どれほど恋しかったか…。はなが欲しくてたまらなかったと言うのに。その為に爪も整えた。柔らかく薄い肌を傷つけないよう。
俺は悟られないよう振る舞った。痛みは幸い宇髄の薬と処置によって和らいでいた。だが、夕餉を食べ終える頃になると、鎮痛剤の効果が薄れたのかぶり返してきた。
しかしはなをこの腕に抱けるのならば、痛みを我慢するくらい容易いことだった。
だが、はなの首筋に唇を這わせて香りを強く感じると不思議と痛みは薄れていった。
香りに鎮痛の効能があるのか、それとも昂りのせいなのか。