第6章 咲 き 香 る[煉獄杏寿郎]
「杏寿郎様、私は杏寿郎様がいつ帰ってきても良いように、帰るべき場所を整えることしかできません。でも…こうしてお料理をして待つことで、杏寿郎様をこの場所へ戻してくれるような気がして。私のゲン担ぎのようなものになっています。槇寿郎様には迷惑をかけてしまいましたけど…」
困ったように笑うはなに額を合わせた。上目で俺を見て照れたように笑う。
「君は俺を喜ばせる天才だな。俺は柄にもなく舞い上がってしまっているのだぞ?」
はなを想ったあの夜、月夜に照らされた桜の花に触れた時思い出した頬の感触。
やはり本物には敵うまいと頬に触れれば、くすりと笑って頬を擦り寄せた。
「杏寿郎様が舞い上がっているところ、見たいです」
「ほう。小躍りでもするか?」
「ふふっ。いつか、私にだけ見せて下さいね」