第6章 咲 き 香 る[煉獄杏寿郎]
宇髄は脚を投げ出し、畳に両手をついて天を仰ぐようにクツクツと笑い出した。何がそんなに可笑しいのだろうか。
「で、ハナちゃんは大丈夫だったのかよ」
クククと喉を鳴らしながら問う宇髄に、面白がっているのではと怪訝な思いを抱きながらも、芝居の券をくれた宇髄に後ろめたさを感じ打ち明けてしまう。
「大丈夫ではない。機嫌を損ねてしまった。楽しみにしていたからな。芝居を」
「だろうな。でもそれさ、芝居が楽しみなんじゃなくて、煉獄と出かけるのが楽しみなんだよ。出かける先なんて何だっていいわけ。芝居だって散歩だってさ。ここのところ任務が立て込んでただろ? ろくに会話もしてなかったんじゃねぇの?」
「うむ。久方ぶりの非番でな。芝居から帰ってきたら、と言われていたのだが、やはりハナを見たら…」
「我慢できなくなったと」
一度だけのつもりだった。一度だけ優しく抱く。
だが、任務続きでろくに会話もできず、触れることもできなかった俺が一度で済むはずなどなかった。
敷布を掴み逃げる腰を引き寄せて、執拗に奥を突いた。何度も意識を飛ばして腰の砕けたはなを組み敷いて、体中に唇を押し付け、はなを味わった。
止めなければと何度も思った。それでも首に絡めてくる腕に甘えて、爆ぜるような劣情に従ってしまった。
涙を舐めとれば、その味にさえ興奮した。膨れ上がる欲をぶつけて甘い声に酔いしれた。
落ちる腰を掬い上げなければ、俺を受け止めることさえできなくなったはなの声は掠れて、愛おしい声も響かせられなくなった。それでもはなは涙を流しながら俺を受け入れた。
気づけば、芝居はとうに終わっている時間だった。
「俺ははなのことになると、堪え性がなくなる」