第1章 the very first day
数日後。
「ハッ、ハッ、、、」
さくらは走っていた。
そしてガンッとその扉に手をついて止まると、力一杯その扉を開けた。
「先輩ッ!!!」
「あ!清野じゃーん!」
「う、、、!先輩〜〜!!」
その声を聞いて、姿を見た瞬間、堪えることができなくなった。
「何何〜?泣いてんの?この、可愛い奴めー」
「だって、皆さんに何かあったらと思うと、、、っ!」
「まぁ、この通り無傷ではないけど、この際だから入院生活を満喫してるわよ」
ギプスの巻かれた腕をパンパンと叩いてニッコリと笑って見せる先輩。
「それにしても、あんたに怪我がなくてホント良かった」
「心配してたんだから」
その姿に涙が溢れた。
「ごめんなさいー。私、私、すぐに助けられなくて。何もできなくて、、、」
ふわっ。
突然、怪我をしていない方の腕で抱き寄せられる。
「何言ってんの?アンタの声聞こえてたわよ」
「そうそう、助けてくださいー!って情けない声が笑」
「もう、私達笑っちゃったわよー」
「う、、、ヒドイ、、、」
「元気もらったわよ。あんたの声に」
「もうダメかなって正直思ったけどね」
「清野に負けてらんないなって」
「ッ、、、」
「だから、ありがとう」
ギュッと優しく抱きしめられて、何も言葉が出なかった。
ただひたすら、本当に無事でいてくれて良かった。
そう思った。
あの後、さくらは気がついたら病室にいた。
初めは記憶が曖昧だったが、色々と思い出した。
黒い影のこと。そしてあのヒーローに助けられたこと。
そしてテレビで四六時中流れているあの事件のニュースを見て、今の状況が少しずつ分かってきた。
事件の直前、匿名の予告があり、ヒーロー達の到着が早かったことで、奇跡的に死者はなく、被害を最小限に抑えられたこと。
それでもさくらの勤めていた病院は跡形もなく、現在再開の目処がたっていないこと。
患者の多くは別々の病院へ転院したこと等。
この事件のニュースをどの局も取り上げていた。
ただ、あの事件がヴィランによるものであったのは間違いはないが、さくらを襲おうとしたあの黒い影のようなヴィランについては、映像どころか目撃証言もなく、どの番組でも取り上げられていなかった。
そしてその目的も。