第4章 遭遇
その頃、爆豪は、先ほど呼ばれた会議室での話を思い出していた。
「昨日の会合を欠席したのはまぁ大目に見るとして、今回君を呼んだのは他でもない。最近の頻発するヴィランによるものとされる事件に関してだ」
ここ最近、これまでにないほどの頻度で大小様々な事件が起きていた。中にはニュースにならないほどの小さいものも含まれるため、今のところメディアは騒いではいない。
だがヒーロー達は虫の知らせのような本当に些細なものながらも無視できない胸騒ぎのようなものを感じていた。
それは爆豪も同様だった。
「一部のヒーロー達にも伝えたのだが、ここ1ヶ月に起きた事件を調べたところ、約半数の事件の加害者にある共通点が見つかった」
「共通点?」
「それは、彼らが善良で幸福な一般市民であることだ」
「はぁ?善良?善良な奴が死人が出るような事件を起こしたって?笑えるぜ」
「そうだ。君が言う通り、これまでこのような事件に関わるヴィラン達とは、社会から孤立した者、不幸に見舞われ自暴自棄になった者、もしくは既に前科のある者など、何かしらのトリガーを持っていた」
「、、、」
「だが、今回は違う。事情を聞かれた周囲の誰もが『まさか』と言い、家宅捜査をしても幸せな生活を送っていた、普通の人以外の何者でもない人達が事件を起こしている。そしてなによりも決定的な共通点が2つ」
「ンだよ、もったいぶってんじゃねぇ」
「1つは、彼らが事件以前の記憶、人格を全て失っていること。そしてもう1つは、事件の直前、彼らがある人物と接触していたことが分かった」
「ある人物?」
「今、分かっているのはその後ろ姿だけで、その素性に関しては何も分かっていない」
「なんだそりゃ、情けねぇ」
「ウホン!そこで今回君を呼んだ理由なのだが、君にその映像を確認してほしい。君はあの病院の事件で唯一、あの謎のヴィランと対峙した人物だからな」
「! まさか、、、アイツなのか、、、?」
「我々はそう踏んでいるが、確認してほしいのだ。君と、彼女に」
爆豪の鼓動が早まる。
これまでの事件を引き起こした奴が、15年前さくらを襲い、また再び彼女を狙っている奴と繋がるなんて。
こんなに早く尻尾を掴むことができるなんて。
「早く!早くその映像を見せやがれ!!」
目の前の資料を叩き飛ばして、爆豪は叫んだ。