第1章 the very first day
「はい!」
「知らない人には付いて行かないこと」
「はい!」
「明るい道を通るのよ」
「はい!」
「よろしい!お疲れさん!」
「はい、お疲れさまです!失礼します!!ぐすっ、、、」
「まったく子どもじゃないんだから」
「だってあの子、ボーッとしてるから心配なんだもん」
「確かにねー、、、やる気はあるし、イイ子なんだけどね」
「せめて、無個性じゃなかったらもう少しマシなんだろうけど」
「それは言ったら可哀想よ」
さくらには個性と言える個性がなかった。
いや、正確には祖母の代から引き継いだ特殊な個性があったのだが、あまりに特殊なため、口外禁止。
人には知られてはいけないと、小さな頃から何度も何度も言い聞かされて育ってきた。
その個性は
「死者蘇生」
その人の肉体が存在しさえすれば、その人を五体満足な状態で蘇らせることができる力。
但しその力は使った者の命と引き換えに発動する。
つまり、一度でもその力を使うとさくらは死ぬ。
だから、さくらは無個性であると公言をしていた。
本当に自分にそんな力があるのか。
一度も使ったことのない力を疑ったこともある。
しかしさくらは身をもって体感した。
その個性の力を。
そして恐ろしさを。
15年前。
無個性だと小学校でいじめられていたさくらは、我慢ができず帰り道、ついに言ってしまう。
『無個性なんかじゃない!私は、、、私の個性は!!』
その瞳に涙を溜めて。必死の思いで。
どんな事が起きるのか、何も知らない無垢な心で。
『死んだ人を生き返らせることができるんだから!!!』
まだ幼いクラスメイト達は信じなかった。
しかしそんなさくらの言葉を信じた者がいた。
その人はさくらを虐げ続けるクラスメイト達を追払い、泣きじゃくるさくらに優しく微笑んだ。
『お嬢ちゃん、大丈夫かい?ホントに酷いことをするね』
『ひっく、うん、大丈夫。ありがとう、、、っ』
『ところでさっきの話、、、あれは本当?』
『え、、、っ?』
『実はお兄さん、今、すごく困ってるんだ。今度は君が僕を助けてくれる?』
白く大きな手が伸びてきたその光景を最後にさくらの記憶は途切れた。