第2章 新しい生活
「ん、、、」
さくらが目を開けると、そこは真っ暗で知らない場所のように見えた。
カーテンの開いた窓からは、グリーンカーテン越しにうっすらと月が見える。
「あ、そうだ私、ヒーロー協会にいるんだった」
窓からの景色を見て今日の出来事を思い出す。
少し眠るつもりがすっかり夜になってしまっていた。
ウラビティがかけてくれたのだろうか。
いつの間にかブランケットを被っていた。
そういえば、おばあちゃんの夢を見たな。
さくらは夢に出てきた祖母を思い出した。
いつもは立って微笑んでいるだけの祖母が、今日は何か言っていた気がする。
『お前は悪くないよ』
「、、、」
被っていたブランケットをそのまま羽織って窓に近づくと、ヒンヤリとした窓が火照った頬に気持ち良かった。
さくらは頭を冷やそうと、窓を開けてバルコニーに出ることにした。ひんやりと澄んだ秋の風が心地よい。
「っくしょん!」
だが11月の夜はブランケットを羽織っていてもさすがに寒かったみたいだ。
さくらはブランケットを強く握って前にすすみ、そっとグリーンカーテンを避けて月を見た。
あの日、ダイナマイトの背中を照らしていた時のように澄んだ空に輝く美しい月。
「綺麗、、、」
そう呟いた時
「やっと起きやがったか、寝坊助」
「ひゃっ!!」
いきなり上から声がして、音もなくダイナマイトが降りてきた。
「ダイナマイト!!いつからそこに!?」
「ちょっと前にな」
ちょっと前、じゃあやっぱりこれを掛けてくれたのはウラビティだ。
「っつーか、おいミノムシ!」
「ミノムシ?」
そう言われてさくらは自分の姿を見る。
ブランケットを頭から被っている姿は確かにミノムシのようだ。
「!! これはっ、だって、寒いから!」
指摘されて焦ってブランケットを脱ぐ。
「ハッ、別にそのままでもいいじゃねェか。麗日がメシをテーブルに置いてるって言ってたぞ」
「わ、わかりました」
ニヤリと笑ったダイナマイトに対抗するように必死に睨みつけながら返事をしたが、ダイナマイトは気にも止めていないらしい。
「んじゃ、俺は伝えたからな、ちゃんと食えよ。、、、ぶえっくしょい!!」
「あ、待って!!」
「ア?」
「あのっ、これ、、、」