第2章 新しい生活
「じゃあ、爆豪くん、あとよろしくな」
「フン!分かってる!」
「あ、さくらちゃん、今寝てるけん、起きたらテーブルに置いてるご飯食べるように言ってね」
「ハァ!?何で俺が!」
「仕方ないやん、私の時間中に起きなかったんやもん」
「チッ!分かったよ」
「、、、疲れたんだね。きっとすっごく頑張って話してくれたんよね」
「、、、」
麗日の言葉で会議中のさくらについて思い出す。
清野家の個性のこと。
15年前の事件のこと。
さくらの祖母のこと。
そしてあの日の黒い影のようなヴィランのこと。
時々詰まりそうになりながら、涙目になりながらも大きな声ではっきりと話をしたさくら。
爆豪はその震える背中を押さずにはいられなかった。
まさか自分がそんな行動に出るなんて。
だけど、それ程までに一生懸命に助けを求める姿に心打たれた自分が確かにそこにいた。
「ハン、、、バカ面が」
そっとバルコニーに降り立って中を覗くと、ソファですやすやと気持ち良さそうに眠るさくらが見えた。
その平和な顔に思わず口角が上がる。
「、、、チッ、キモ」
そんな自分に気が付いて、爆豪は急いで持ち場に戻ろうとした。
その時、一瞬、さくらの頬で何かが光ったのが見えた。
思わず窓に張り付く。
「、、、!」
泣いて、やがる、、、。
さくらの頬をポロポロと涙が伝っているのがはっきりと見えた。
何で?
「おばあちゃん、、、ごめんね」
「!」
そうさくらの口元が言っているような気がした。
、、、あぁ、そうか。
ガラ。
爆豪は静かに窓を開けた。
そして眠るさくらに床に落ちていたブランケットをかけた。
そして頬を拭ってさくらの耳元で囁いた。
「お前は何も悪くない」
本当はそんなことしてはいけないと分かっていた。
だけどさくらがもう悲しい夢を見ないように。
「、、、」
さくらの息遣いが穏やかになったような気がする。
それだけ確認すると爆豪は静かに窓から外に出た。
外に出ると目の前には低い大きな月が見えた。
「ふー、、、」
爆豪が大きく息を吐くと、真っ暗な空に白くなって上がっていった。